フジファブリック『浮雲』
僕は『パッションフルーツ』までが好みで、『若者のすべて』以降は別のバンドだと思っている。アルバムで言えば、『FABFOX』までが好みだった。何となくのイメージでは、『パッションフルーツ』以前、『若者のすべて』からボーカルの死去まで、それ以降の三段階に音楽性が変わっているように思う。特に変化を感じたのは、『若者のすべて』以降は自己啓発気味の歌詞になったことだろう。幅広く受け入れられた代わりに、それまでの季節感やフェチズムが薄れていったように思う。
『若者のすべて』は良い曲だが、当時の僕は彼らの曲であるというのが残念だった。初めて聞いた時、歌い方の違いから彼らとは気づけなかった。それぐらい、大きく方向転換したのだろう。結果的に言えば、それなりに有名になった。しかし、僕の中では、すでに解散したようなものだった。今回改めていくつか聞いてみたが、その気持ちは揺らがなかった。
今回紹介する『浮雲』は初期の曲だ。歌詞は孤独がテーマになっている。浮雲のような人生に孤独を感じるが、それでも一人で進むしかない、というようなものだろうか。自己啓発的というよりも、自身への率直な気持ちというような気もする。それだけ、音楽で飯を食うのは大変なのだろう。
登ろう。いつもの丘に満ちる欠ける月。
僕は浮き雲の様。揺れる草の香り。
何処ぞを目指そう。犬が遠くで鳴いていた。
雨で濡れたその顔に涙など要らないだろう。
歌いながら歩こう。人の気配は無い。
止めてくれる人などいるはずも無いだろう。
いずれ着くだろう。犬は何処かに消えていた。
雨で濡れたその顔に涙など要らないだろう。
消えてしまう儚さに愛しくもあるとしても。
独りで行くと決めたのだろう。
独りで行くと決めたのだろう。